アンジェロ イシさんは、東京にある武蔵大学の教授で、長年にわたって日本在住の外国人について研究しています。ブラジル人であるアンジェロ イシ教授は、来日してから20年以上日本で暮らしており、自身を「在日ブラジル人一世」と紹介します。
イシ教授によると、「在日ブラジル人一世」の意味は、「来日し定住した初代のブラジル人」です。この呼び方を通して、「私たちブラジル人もこの社会の一員である」と日本人の方々に伝える作戦なのだと教授は言います。
講演会では、ブラジル人コミュニティに関する興味深い情報をいくつか挙げてくださいました。その一例として、東北地方の大地震後の運動「頑張ろう日本」についても話してくださいました。
アンジェロ イシ教授にインタビューし、教授の在住外国人住民の行動に関する考察と、日本に住んでいる皆さんへのメッセージをお話しいただきました。
インタビュー
「僕はもともと『日系ブラジル人三世』と紹介されることが多かったのですが、ある時期からは、もう戦略的に、自己紹介するときには必ず『在日ブラジル人一世』と表現するようにしました。それはどういうことかと言うと、僕の自己紹介を聞いている日本社会の皆さんが、『なるほど、アンジェロという人はもうお客さんではない。彼はずっとこの日本社会で頑張っていく、そういう気持ちを持っている人間なんだ』とはっきりと分かるように、僕はアピールをしたいということです。
僕だけではなく、日本に住む多くのブラジル人、外国人も同じように、戦略的にこのように自己紹介をして、自分はもうお客さんではない、自分はこの日本というチームのメンバーとして、仲間として、一緒にこのチームに入らせてほしいとアピールをすればいいと思います。
Q.日本で外国人住民と日本人との交流は行われていますか。
「残念ながら、本当の交流と理解と共生が実現しているとは言えないのが、今の状況です。それはどういうことかと言うと、もちろん日本に住む多くの外国人は、心の中でまだ悩みを持っています。自分の生まれ育った国、つまり戻りたい国と日本との間で揺れているという問題ももちろんあると思いますが、それ以上に、やっぱりこのホスト社会、つまり受け入れる側の日本社会には、21世紀に入ったのに、そしてこの2014年のグローバル時代であるにもかかわらず、まだ外国人を同じ仲間と認め日本で同じチームのメンバーとして頑張っていこうという決心を持った人たちが足りません。その決心を持っていない人たちというのは、いろんな業界のリーダーにも多かったりするわけです。そのように僕は分析しています。」
Q.外国人住民は何をすれば交流を深めたり、多文化共生を進められますか。
多文化共生を必死に考えたり、この概念は有効であるかとか、統合することは良いことかなど、漠然とした抽象的な問題を議論する必要はありません。最初は、チャンスがある度に、日本人の知り合い、自治会長や勤め先の上司などに、確実かどうかわからなくても、自分は日本に残る可能性があり、死ぬまでここに残るかもしれないと、はっきり伝えた方がいいと思います。
なぜこういうことをはっきりしておいた方がいいのか。それを聞いた日本人たちの、私たちを見る目が変わるからです。例えば、日本に残ると伝えていなければ、『この人に何かの役割を任せたいけど、外国人だからいつかは帰ってしまう。』と考え、日本人と比べて、外国人は100%期待できないでしょう。このような捉え方が多くの外国人の出世を妨げています。ですから、日本人の方に『日本に残る希望があります。あと50年間日本にいるかもしれないし、死ぬまでいる可能性もあります。』とはっきり伝えます。このように伝えておくことによって、出世の候補に入れてもらうことが可能になったりします。これは恋愛関係など、いろいろな面にも当てはまります。例えば、交際相手から結婚前提に付き合いたいと伝えられたら、この人の見る目が変わります。幅広く通用すると思います。」
最後に皆さんにメッセージを残していただけますか。
「私は一人の「在日ブラジル人一世」として、是非皆さんに、とにかく同じチーム日本の一員として私たちを仲間入りさせてくださいと言いたいです。そして日本に200万人以上いる外国にバックグラウンドを持つ人たちのことを、悩みの種、つまり何か問題を起こす可能性がある人たちとしてではなく、まさにグローバル人材の一人、貴重な人材の宝庫として、よりポジティブな目でとらえなおしてくだされば嬉しいなと思います。」